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2012年8月31日金曜日

鏡とボディーイメージ


 鏡に映るのは自分のありのままの姿であると思っている人が多いでしょう。私もそうでした。ところが、最近「??」と感ずることがあり、このことに疑問を持つようになりました。私が鏡で自分の顔を見るのは、せいぜい朝顔を洗うときぐらいです。自分の顔は見慣れていますので、そのときには特に何も感じません。ところが、同じ顔を写しているはずなのに、写真を見たときには「エライ歳をとったナ。」と感ずるようになりました。実は、同じような印象を、先日放送されたTV番組で自分の顔を見たときにも持ちました。これはどういったことでしょうか?
 そこで思い出すのが拒食症の患者さんの症状です。彼女たち(拒食症の多くは女性です)はいくらやせていると言われても鏡を見た自分の姿を太っていると感じてしまうそうです。この症状は本来の自分よりも悪いイメージを持ってしまうことですが、私の場合は本来の自分の姿よりもよいイメージを持っていることになりますので、全く逆です。しかし両者とも真実の姿を見ていないという点では共通しています。
 つまり、そもそも鏡を見て本当の自分だと思っている姿は必ずしも現実の忠実な再現ではなく、「こうありたい」、あるいは逆に「こうあってはこまる」といった意識によって修飾されたものであることが分かります。私は今年60歳になり、「老い」を素直に受け入れているはずでしたが、やはり「若くありたい」と思っているのでしょう。
 それにしても面白いのは、何故写真やビデオだと鏡の場合のようなデフォルメされた自分に見えないのでしょうか。このことは、ヒトが「何を見ているのか」という問題と深く関係するはずです。ビデオでもダメなのですから動きのあるなしが問題ではなさそうです。「鏡で自分を見る」ときには特殊な情報処理が脳でされているのでしょうか。少し調べてみましょう。
 カーブやフォークボールが手元に来て急に曲がるようにバッターには見えるのも実は本当の姿ではありません。軌道の変化はボールがピッチャーの手元を離れたときからすでにはじまっています。ところが、バッターは普通は直球の軌道をイメージしています(「直球であってほしい」ということでしょうか)。最初、直球と変化球の違いは小さくて認識できないのですが、あるところで急に予想した軌道と現実の軌道が異なることに気づきます。脳はそのつじつまを合わせるために「急に曲がった」と感ずるように出来ているのです。もし、最初からフォークボールが来ることを想定していれば、ボールが急に落ちたとは感じず、逆に直球が来てしまうとそれがホップしたと感じるのでしょうか。樋口君、実験しませんか。

彼末

2012年8月20日月曜日

卒業生の近況報告 第一弾


20123月に博士課程を修了しました水口暢章です。

4月より(独)情報通信研究機構 脳情報通信融合研究センターで研究員をしています。普段は京都府にある(株)国際電気通信基礎技術研究所(ATR)で研究を行っています。情報やら通信やらスポーツと関係なさそうな難しい名前の研究所ですが、これまでと同じように運動制御・運動学習のことを研究しています。学生から社会人になり、関西に引っ越すなど大きな環境の変化はありましたが、こちらの生活にも慣れ、楽しく過ごしています。しかし、京都の夏は非常に暑く、7月末に東京へ出張で行った際には涼しく感じるほどでした。また、院生の頃と同じく今も自転車で通っていますが、研究所は最寄駅から自転車で20分ほどかかる場所にあり、しかもずっと登り坂になっていますので、研究所に着く頃には汗だくです。

さて、研究に関してですが、ATRには3TMRI2台、連発磁気刺激装置(rTMS)や直流電気刺激装置(tDCS)があります。また、私自身は使いませんが、脳磁図(MEG)やすごく高そうな装置などがたくさんあり、設備はとても充実しています。さらに、プログラムに精通した人も多く、刺激呈示や解析のためのプログラム作成の際には助けてもらっています。

 詳細な研究内容はここには書けませんが、面白いことをやっていると思いますので、学会発表や論文などでみなさまに見ていただくことを目指して頑張ります。



水口暢章

2012年8月9日木曜日

オリンピック100m競走


 先週は台湾の出張でした。
餃子の後はホテルでオリンピック男子100mの決勝のテレビ観戦を楽しみました。
ボルトは北京の時の「超人類」といった印象はありませんでしたが、それでも強いことに変わりありません。
ちょうど台北に向う飛行機の中で川島浩平著「人種とスポーツ」を読んだところでした。
彼は「黒人は本当に強いのか」について、主として歴史的な視点から考えようとしています。
はっきりと結論は述べていませんが、底に流れているのは人種によって能力に差はないというメッセージ。
そもそも「人種」とはなにか、「黒人」とひとくくりにできるものはない、そして「黒人」をとりまく社会的状況が彼らを強くしている、といいたいようでした。

 しかし、今回もオリンピックの100m決勝は全員「黒人」でした。
データはありませんが、彼らが他の選手たちより多く練習しているとは思えません(日本人でもやり過ぎるくらいやっているのではないでしょうか)。
またこの本では黒人にも遅い人間がいることを黒人が生得的には強くないことの例としていますが、これは明らかに基本的な間違いですね。
オリンピックと言わず、スポーツで一流になるかどうかは正規分布の端のグループでの話です。
他の種目はいざ知らず、100m、投てきなど基本的な身体能力がものを言う競技では、生得的なものが大きな要因であることは間違いないでしょう。
人種云々を言わなければ、100mには生まれつきの素質が重要であることを否定する人はいないと思います。
ところが、「人種」という話が入ったとたんに氏より育ちにしたがるのはなぜでしょうか?
肌の色や鼻の形は違っても、骨格の形状や筋の性質はすべての民族、人種で同じに違いないと考える方が無理なのではないでしょうか。

 体の大きさは言うまでもなく遺伝で決まります。
特に身長は北欧系の白人、あるグループの黒人が平均して高いです。
この点で東洋人は残念ながらどうしようもありません。
それを考えれば、バレーボールやバスケット、高跳びなどは東洋人は難しい競技であることは、黒人が100mに強いというのと同じくらい確かなことのように思えます。
ただしこれはあくまでも確率の問題です。
それは着目する能力について、(1) あるグループ内での分布の形がどうであるかと、(2) どれだけ多くの若者がそのスポーツに参入するかの二つの要因の積です。もちろん、バスケットのYao Ming のように例外はつねに存在します。
日本の女子バレーボールも身長のハンデを克服して頑張っています。
それを思うと、オリンピック100m決勝のメンバーがここ何十年すべて黒人という事実は、この競技に彼らが持っている生得的な性質がいかに重要かを証明しているといってもよいのではないでしょうか?
それが何かはこれからの研究が明らかにするでしょう。

 この本で面白かったのは、これまで黒人の生得的な能力がものを言うと考えられていた野球、ボクシング、バスケットボールなどで活躍する黒人の割合が減ってきているいう点です。
多分これらの競技はかって、黒人が身を立てる近道であり、それに多くの子供が参入したのでしょう。

 このように考えると、もし日本人が金メダルを多く取れるような状況を作りたいなら、体操、バドミントン、卓球など速さとスキルを要求される種目にできるだけたくさんの子供が向かうようにするのが近道でしょう。
しかし、それではあまりにも夢がありません。
大きな壁があると分かってはいても、それにチャレンジしてオリンピック100mの金メダル、とはいいませんがせめて入賞するようなランナーが出るのを死ぬまでに是非見てみたいものです。

彼末

2012年8月4日土曜日

生理科学実験技術トレーニングコース

休みの日を活かして連投です。D2中川です。

昨日まで5日間、愛知県岡崎市にある自然科学研究機構 生理学研究所にて修行を行ってきたので報告いたします。

まず、生理学研究所(略して生理研)は、人体基礎生理学研究・教育のための大学共同利用機関であり、人体の生命活動−特に脳と人体の働き−の総合的な解明とそのための国際的研究者の育成を行うところです(生理研HPより)。

総合研究大学院大学として、大学院生の充実した教育機関でもあります。
彼末研の中田さんが学位を取られたところですね。

スポ科と違ってスポーツを扱うことは難しいかもしれませんが、純粋に生理学を極めたい学部生・修士生は、こちらへ進学するのも選択肢の一つかもしれません。施設・環境がビックリするほど充実しています。

そして、生理学トレーニングコースとは、生理研が主催となり、毎年夏期集中で行われ、学部生、大学院生、若手研究者を対象として、実習形式で最新の生理科学の技術を学べるものです。
学部生でも参加できるので、興味がある方は来年以降、参加してはいかがでしょうか。

分子レベルからヒトの行動レベルまで、様々なコースが用意されていますが、今回、私はヒト脳機能マッピングについて学んできました。要は、fMRIの理論、技術のお勉強です。

通常、2~3年かけて学ぶものを5日間で詰め込むというキツキツの日程でしたが、多くの一流スタッフの方による手厚い実習補助、講義によって、基本的な理論、技術は習得できたように思います。
また、全国から集まった受講生やスタッフの方々と交流の機会が出来たことは非常に意義のあることだったと思います。

最終日、実習後に生理研のMRI施設を見学させてもらいました。
ここには3テスラのMRIが3台もあるという何とも羨ましいところでした。

当然、スポ科と違い、医学的な研究、診断に用いられることはないので、脳機能画像を撮影し放題です。
実際、一台は頭部専用機のMRIでした。
もう二台は、なんと二人の被験者を同時に撮影して、両者間でコミュニケーションをしているときの脳活動を調べるという画期的な研究をするためのものでした。

Dual MRI (定藤研HPより)






お金(施設)も知識(アイディア)も人員も兼ね備えた恐るべき研究機関であることを身にしみて理解できました。
とはいえ、このようなところと対抗していかなければいけないのです、そうですね、報告記を長々と書いている場合ではないのかもしれませんね。


以上、6月中旬から8月上旬までの長かった出張ラッシュが終わり、腰据えて論文書いていこうかと思います☆


・・・あ、GCOEシンポジウムの準備しなければ。。。

三研究室合同研究会

暑い日が続いていますが、皆さんどのようにお過ごしでしょうか。

7月上旬のヨーロッパ出張の報告を加藤くんがなかなかしてくれないので、その翌週に行われた理工の藤江研、人科の藤本研、スポ科の彼末研の三研究室合同で行われた研究会について、D2中川が報告いたします。


この研究会は、理工学術院の藤江教授を代表とする科研費基盤Aのプロジェクトに彼末教授や、人間科学学術院の藤本教授が参画していることから生まれたものです。

理工、スポ科、人科と学術領域は異なりますが、それぞれの研究室は、同じ「ヒトの生体機能」という共通した研究領域を持っているため、科研費の枠組みを超えて、お互いの研究活動に対する意見交換・技術共有し、共同研究にまで発展していくことを目標として立ち上がったものです。

その第一歩として、合宿という形式で合同研究会が7月14~15日にかけて軽井沢セミナーハウスで行われました。

一同、高田馬場から貸し切り高速バスで軽井沢に向かいました。





ついて早々、研究の前に「ヒトの生体機能の実践理解」の一環として、セミナーハウスの広大なグラウンドにて、研究室対抗のアルティメット(究極のスポーツらしい)大会が開催されました。

最初はおだやかでも・・・
徐々に激しくなり・・・





















夢中になる彼末先生
















結果、スポ科ともあろうものが優勝を逃してしまいました。。。
おそらくリベンジの機会はまた来ると思います。
次こそは・・・。






その日の夜がメインイベント。

まず、各研究室の簡単な紹介がパワーポイントで行われ、













各研究室で5題ずつ、ポスターによる研究発表を行いました。

部屋の周りに15枚ほどのポスターが並ぶ壮観さ



なんと彼末先生も研究内容を説明!
大好評だった中田さんのポスター。






翌朝、グループワークが行われました。
このイベントの狙いは、バックグラウンドが異なる人間が集まったことで、
様々な視点、考え方から一つのことに関して議論できるであろうというものです。

一時間を超える熱論
結果を各班ごとにパワーポイントで発表し、
先生方に評価・採点していただく
非常に活発な議論がなされ、ユニークなアイディアが生まれました。



以上のような短く、濃い過程を経て、三つの研究室のことがお互い理解でき、
親交も深まったように思います。

今回の成果を生かし、今後もまた研究会が行われる予定です。



前列左から、百瀬准教授、藤本教授、藤江教授、赤澤教授、彼末教授、小林研究員、土井研究員
最後列は幹事役の三人