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2012年11月8日木曜日

ゴルフのアプローチを考える

こんにちは、学部3年の篠崎です。
正確性実験最終回、ゴルフのアプローチを担当します。
なぜゴルフかというと私がゴルフ部に所属しているからです。ゴルフは大学から始めました。高校までは野球をしていました。ゴルフはお金がかかるスポーツだと思われていますが、学生ゴルファーはゴルフ場などのご好意で安くプレーができることが多いです。ゴルフ場キャディのバイトではバイト後ラウンド練習を無料でできます。様々な点恵まれております。ゴルフは大人だけのスポーツではなく、若者も楽しめるカジュアルさも備えていることを広め、幅広い層に普及させたいと最近思っています。
実験の話から逸れてしまいました。それでは本題に入っていきます。

<実験の感想>
今回は20m、50mのアプローチを実験で行いました。20mは日ごろよく練習する距離なので多少自信はありました。50mは自分自身苦手に感じている距離でした。今回用いたサンドウェッジはフルショットで85m位飛ばせます。50mはフルショットに近いですが、加減をしなければいけない中途半端な距離なので難しいです。しかし、今回の実験を通して50mのふり幅が分かるようになりました。練習になりました。

プレーは、結果によって考えず


         原因で考えるのが上達の秘訣である

                          ベン・ホーガン

この言葉が今回の実験の目的です。



~ゴルフアプローチショットの正確性~


篠崎 真

1.はじめに
 私は大学でゴルフ部に所属している。ゴルフは大学から始め、高校までは野球をやっていた。ゴルフは正確性を競うスポーツだと言える。日本語ではゴルフを孔球と言うように、各ホールごとに一つの穴へボールを狙って入れる競技である。その中でもアプローチやパターと言ったショートゲームはゴルフにおいて65%を占める重要性を持っていると言われている。その中で今回アプローチを取り上げて実験した。被験者は私一人だったため被験者間の比較はできなかった。

2.実験方法
被験者;大学ゴルフ部員、ゴルフ歴3年目、ハンデキャップ5程度、右打ち。

実験方法;①人工のゴルフ用マットから20mのところにターゲットを作る。そこを狙ってショットを行う。使用クラブはサンドウェッジ。ターゲットを原点とし、打ち出し方向に垂直なラインをX軸、打ち出し方向に平行なラインをY軸とした。被験者から見て原点から右をX軸のプラス方向、左をマイナス方向、原点から奥をY軸のプラス方向、手前をY軸のマイナス方向とした。
30球打ち、ボールの落下位置を原点からの距離をX軸、Y軸方向で測定した。

実験方法;②①の実験の距離を50mに伸ばした。40球球を打って①同様測定を行った。

3.結果

①20mアプローチ
図1は20mのアプローチショットにおいて、被検者が打ったボールの落ちた位置を示している。
X方向では最大で65㎝の誤差であるが、Y方向では最大で310㎝の誤差がある。Y方向誤差が大きくなっている。計算上、目標からの距離における標準偏差においても同様にY方向よりもY方向の方が大きくなっている。(x;29.264、y;149,752)
グラフでは実際測定した数値を20mの距離で割った%で表示している。ターゲットに対して左右の狙いの方が正確で、距離感の方が合わせにくいことが分かる。


図1.20mアプローチの落下点


②50mアプローチ

図2は50mのアプローチショットにおいて、被検者が打ったボールの落ちた位置を示している。
X方向では最大で600㎝の誤差であり、Y方向では最大で1240㎝の誤差がある。Y方向誤差が大きくなっている。計算上、目標からの距離における標準偏差においても同様にX方向よりもY方向の方が大きくなっている。(x;266.9855、y; 418.1081)
全体の傾向としてはグラフの第2象限と第4象限を結んだ斜めのライン上に分布している。
グラフでは実際測定した数値を50mの距離で割った%で表示している。ターゲットに対して左右の狙いの方が正確で、距離感の方が合わせにくいことが分かる。


図2.50mアプローチショットの落下点


4.考察
 20mのアプローチは距離感にぶれが大きく左右のぶれは小さかった。この理由としてまず考えられるのがスイングの軌道である。20mのショットはスイングが小さい。その分クラブのフェースローテーション(※下部で説明しています。)が少なくなる。またバックスイングも小さく、クラブを下す際の位置エネルギーが小さくなる。勢いがつかない分クラブを制御しやすく確実にボールをインパクトできる。結果として、ターゲットに対する左右のぶれは小さくなる。距離感のズレの原因はアプローチショットが多関節を用いた連関的動作だということにあると考える。直前のショットの結果から、次のショットへその経験を生かそうとする。例えば距離が弱ければ先ほどよりも強くインパクトしよう、と考える。しかし、強くインパクトをしようと考えてもそれをどこで調節すれば良いのかはっきりと認識できていない。連関動作では、関わる身体部位の一部の動作が変化することで動作そのものが変化する。それぞれの動きが総合的に関わるので逆にどこか一部のみを変えて動きを調節するのが難しい。それ故距離感の調節は難しくなるのではないだろうか。
 次に50mのアプローチについて考えてみる。50mのアプローチはフルショットに近い大きな動作になる。その分スイングにも勢いがつき、クラブのフェースローテーションも大きくなる。それにより20mのアプローチに比べ左右のぶれも大きくなっている。また、全体的なばらつきも大きい。スイングスピードが増すため正確性が損なわれるのであろうか。また、20mに比べて大きなミスも目立つようになっている。
 結果で示したようなボールの斜めの分布について考察する。Y軸マイナス方向への打球はⅹ軸プラス方向へ集中し、Y軸方向プラスへの打球はX軸マイナス方向へ集中している。テークバックでクラブを上げた位置によって、どこまでボールが飛ぶか予測がつく。その予測に基づいてダウンスイングなどで多少の調整が行われると考える。バックスイングの時点で目標よりも大きな結果になりそうだと感じた瞬間、インパクトを少し弱めるような調節をするのではないだろうか。逆にバックスイングで目標の距離に足りないと感じるとインパクトではしっかりミートしようと心がける。そうしてそのインパクトの強さの調節はクラブとボールの接触時間に関わってくる。

インパクトを弱めようとするとクラブとボールの接触時間は短くなる。クラブはフェースローテーションを行っている。接触時間が短くなるとクラブはボールに対して“開いている”状況になる。クラブフェースが開いているとボールは右打ちの被験者から見て、右側に飛びやすく距離もでない。
インパクトを強くしようとするとクラブとボールの接触時間は長くなる。そうするとフェースローテションが進行しクラブが“閉じている”状況になる。クラブが閉じているとボールは被験者から見て左側に飛びやすく飛距離が出やすい。
その結果今回のようなボール分布になったと考えた。
 今回の実験では、被験者が一名であったため個人の傾向の分析になっている。レベルや経験の違う複数の被験者のデータを取りそこから改めて考察していく必要があると考える。
※フェースローテション
1.テークバック(フェースが目標に対して”開いている”)
2.インパクト(フェースが目標にスクエアに向いている)
3.フォロー(フェースが”閉じている”)     

サッカーのキックにおける正確性


 こんにちは、学部3年の青木です。
 今回も、演習Ⅲの時間に様々な運動の正確性を調べる実験を行いました。今回、シリーズ3回にわたって、私、渡部君、篠崎君で正確性に関する実験の結果と考察を掲載していきます。
 正確性シリーズの第二回は、「サッカーのキックにおける正確性」についてです。
 
 
実験の感想
サッカーでは狙ったところにボールを蹴れるだけでは通用しません。そのボールの質、速さ、軌道、回転など、さまざまな要素が揃った、状況に適したボールを蹴れてはじめて、試合で使えます。しかもサッカーでは置いてある、止まったボールを蹴ることは少ないです。常に動いたボールを、動きながら、動いている目標に、そして状況判断をしてどのようなボールを蹴るのか考えて、蹴らなければなりません。今回の実験はクローズドスキルであって、サッカーはオープンスキルが必要な競技で、どれだけサッカーの実践的なスキルを測定できたかは疑問が残こりました。
キックの正確性は試合中であればもっとばらつきの大きいものとなったと思います。相手のプレッシャーや天候、グランドコンディションなど正確性を下げる要素はたくさんあります。ただ、本当に良い選手というのはその正確性の低下の度合いが小さいのだと思います。オープンスキルをクローズドスキル化できる選手が「うまい」選手じゃないかと思います。
 
 
 
青木 奎樹
 
 
運動の制御において、人はある課題を普通よりも速くやろうとすると失敗する。例えば速くタイピングをしたり、はやく針の穴に糸を通そうとしたりすると普通におこなったときに比べ、ミスの回数は増えるだろう。これらは正確性の欠如からくるものである。

今回、この正確性に関わる実験を行った。どれだけ正確にサッカーボールを狙ったところに蹴れるかを調べた。

 

 

実験方法

被験者は3名。ABはサッカー未経験者であり、Cは大学の体育各部所属の選手。

サッカーボール、メジャー二つを準備する。ボールを蹴る位置を定め、そこからメジャーを伸ばす。15mの位置でもう一つのメジャーを直角に交差させる。ボールを蹴る位置からみて縦軸をy軸、横軸をx軸とし、ボールが落下した場所を座標点として記録する。メジャーの交差している点(0,0)をキッカーは狙う。数回の練習のあと、利き足で30回試行する。また、Cは目標を30mにした試行も30回行った。

 

 

結果

グラフとして以下に示した。(単位はすべて%)


                        図1、被験者の全試行


 

考察

 ばらつきの平均値を距離で割った値をみてみると、A0.163B0.113C0.096C30m0.082となった。サッカー未経験者に比べ、体育各部所属者の方がキックの正確性が高いことがわかる。ABCを比べると、ABCの順でだんだんとばらつきが小さくなっている。その傾向は特に、Y軸よりもX軸に顕著である。キックの正確性の高い人は左右のずれが小さいことがわかる。BCを比べると、Y軸方向のずれはそれほど違いがない。15mの距離では、キックの際に距離感を必要とすることはあまりないから差が出なかったのではないかと考えられる。

Cの試行を比べてみると、Cは距離が30mになると、15mの試行に比べそのばらつきが小さくなった。それは実戦により近い距離で、普段からこのくらいの距離のキックを蹴っているために、15mの結果よりもよい結果がでたと考えられる。15mの場合、X軸よりもY軸の方がばらつきは大きい。実際の競技では、この距離を浮かした軌道で蹴ることは少ないからだと考えられる。実際に試行している際も、自分のキックのずれの感覚と実際の記録に開きがあると感じた。この距離では左右の正確性のほうが重要で、人に向かって蹴るので距離感はあまり意識しない(腕以外の全身でボールを止めてよいため)ことが影響しているのではないか。30mの場合、X軸とY軸のばらつきは同じ程度である。15mの場合よりもY軸のばらつきは小さくなった。試合中であれば、相手の頭上を越えるような軌道でなければパスにならなく、この距離だと左右のずれよりも距離感の方が重要性は高いためにY軸(距離感)の精度が高まっていると考えられる。

 また、C30mの試行が一番狙った所に蹴れていた。この30mの試行の落下地点の分布に注目すると、ゴルフのアプローチでおこなった同様の実験の落下地点の分布に似ていることに気付いた。どちらも第二象限、原点付近、第四象限にボールの分布が偏っている。足を使う競技と道具を使う競技で動きも全く違うが、落下地点の分布が似ていることは興味深い。つまりミスの仕方が同じということである。動きは違うものの、ボールをインパクトする瞬間には両者に共通点がみられるではないか。

 今回実験で行った蹴り方はインフロントキックといい、インパクトの位置は足の親指の付け根の3〜4㎝手前、甲の内側でボールに対し足首を伸ばした状態で、地面すれすれをかすめながらボールの中心から下をミートしてキックするものである。一方ゴルフのアプローチのインパクトはボールの下にフェースを滑り込ませ、こすり上がるようにボールを捉えている。つまり、サッカーのインフロントキックとゴルフのアプローチはインパクトの瞬間、同じような形でボールを捉えていると考えられる。そのためにこの2つの落下地点の分布は似ているのではないか。しかしなぜ、このような分布になるか。

 自分の経験から言えば、第二象限にいってしまう原因はボールをインパクトする位置が正確に蹴れるインパクト位置より足首に近いところになってしまうこと。逆に第四象限にいってしまう原因はより親指の付け根に近いところでインパクトしてしまうことが考えられる。

 スイングスピードは同じとして、うまく狙ったところに蹴るイメージのまま、足首付近でインパクトしてしまうとボールをより厚く捉えて(足の形状を考えるとゴルフでいうロフトの立っているアイアンのようになっている)しまい、ゴルフのような表現を使えば、フェースが閉じた状態に足首がなってしまう。(足首に近い部分の方がボールに当たる面積が大きく、蹴る瞬間のボールは軽く感じ、その影響で足首を固定する時に思ったよりも内向きに固定してしまう感覚。)そのためにボールは目標より遠く飛び、なおかつ左方向にいくと考えられる。

 逆に、親指に近いところでインパクトしてしまうと、ボールを薄く捉える(足の形状を考えるとゴルフでいうロフトの寝ているアイアンのようになっている)ことになり、フェースが開いた状態に足首がなってしまう。(ボールに当たる面積は小さく、蹴る瞬間のボールは重く感じる。その影響で足首を固定する際に思ったよりも外向きに固定してしまう、ボールの重さに足首が負ける感覚)そのためにボールは目標より飛ばず、なおかつ右方向にいくと考えられる。

 これらはサッカーの経験から考えた推測に過ぎなく、ゴルフの場合はどうなのかもわからない。ただ、正確性を考える上でどうしてズレが生じてしまうのかを考えることは大切だと感じた。

 

2012年11月1日木曜日

ダーツの投動作における正確性

 こんにちは、学部3年の渡部です。
 今回、演習Ⅲの時間に様々な運動の正確性を調べる実験を行いました。今後、シリーズ3回にわたって、私、青木君、篠崎君で正確性に関する実験の結果と考察を掲載していきます。
 正確性シリーズの第一回は、「ダーツの投動作における正確性」についてです。
 

実験の感想
 ダーツは思いのほか難しく、なかなか思ったところに刺さりませんでした。研究室の壁にも刺さりました。先生、すいません。でも、そんな一投一投が新鮮で面白かったです。
 また、ダーツは静的なスポーツなので、サッカー部やゴルフ部の連中とはいえ、いい勝負ができるのではないかと思っていました。しかし、実際は標準偏差では二人に差を見せつけられ、体を動かすゲームでは、私と彼らのようなアスリートには埋められない溝があると改めて感じました。
 ただ、かつてソクラテスが言ったように、「無知の知」が大切であり、埋められない溝があり、それを必死に改善しようとする心が我々人間にはもっとも重要なことであると、私は思います。なので、なぜこのように私と彼らの差が表れてしまったのかも含め、いろいろ考えてみたので読んでみてください。
 


1K10C478-2
渡部 潤

1. はじめに

 スポーツにおいて、正確性が求められる場面はよく見られる。例えば、野球ではピッチャーの投球には正確なコントロールが要求される。また、過去の実験では、テニスやバレーボール等の一流選手が特定の的を狙ったときの的からの誤差が調べられた。その結果、それぞれの競技の一流選手の各試行の標準偏差は、選手から的までの距離の約3%になっていた。この3%の標準偏差はどの競技にも見られた。

 そこで、今回の実験ではダーツを用い、一流のダーツ選手ではない被験者のダーツの投動作における正確性について調べてみた。



2. 実験方法

 市販されているダーツボードを使用し、ダーツボードの中心を狙って投げた。

 被験者にはダーツボードから245cm離れた地点から投げてもらった。試行数は全部で15投である。ただし、ダーツボードに刺さったものを一試行と数える。

 被験者は、インディアカ選手(J)、サッカー部所属選手(K)、ゴルフ部所属選手(高校時代は野球部投手)(M)3人である。

 ダーツの刺さった地点は床に水平な軸と床に垂直な軸で座標をとり、中心からの距離の標準偏差を算出した。そして、標準偏差が的からの距離245cmに対してどのような割合になっているかを調べた。


3. 結果


1は各被検者のダーツが刺さった位置を示している
1より、全ての被験者でx方向よりもy方向の誤差が大きくなっていることが分かる。Jではx方向では最大で11.1cmの誤差であるが、y方向では最大で33.8cmの誤差があり、y方向の方が誤差が大きくなっている。Kではx方向は最大で8.1cmy方向は14.4cmMではx方向は10.5cmy方向で11.8cm、というようにy方向の誤差の方が大きかった。また、表3より、目標からの距離における標準偏差においても同様にx方向よりもy方向の方が大きくなっている。

1. 各被験者の全試行
  各被験者を見ていくと、Jは標準偏差が約14.1と最も高く、運動部に所属しているKMはそれぞれ標準偏差が約8.26、約8.18とほぼ同じであった。それぞれの被験者の標準偏差をダーツボードからの距離との割合でみると、Jは約5.76%Kは約3.37%M3.38%というように、先に述べた一流選手が的を狙った時の正確性である3%に近い値が見られた。

4.考察

 運動経験年数が長いKMでは運動経験年数が短いJよりも標準偏差が小さかった。また、KMでは野球投手経験があるMの方が標準偏差は小さかったが、大きな差は見られなかった。運動経験の長さが標準偏差に影響を与えた理由は、身体をコントロールする能力に関係していると考えられる。サッカーもゴルフ、野球も全身のバランス能力が非常に重要な競技である。ダーツのようにあまり全身を動かさないような動作では、身体を静的に安定させておく能力が高い方が有利であろう。なぜなら、身体を安定させる能力が低くなってしまうと、身体の揺れが大きくなり、手先まで揺れが伝わってしまうため正確な投動作を行うことができなくなってしまうと考えられるからである。したがって、長い運動経験から身体のバランスのとり方を学習し、静的な姿勢において余分な動きをコントロールできる能力をもっている方がダーツのような投動作では正確性を高めるのであろう。また、Mは野球の投手を経験しているため、ダーツのように手で物を投げるような場合には投手経験が有利に働くと予想された。つまり、Mは他の被験者よりも標準偏差が小さくなるように思われた。しかし、実際のデータではMKとほとんど変わらない数値であった。このような結果から、ダーツにおいて野球の投球動作の技術はあまり関係がない可能性があることが考えられる。
 被験者全員の標準偏差は、本レポートのはじめに述べた、一流選手が的を狙った動作の正確性3%から大きく外れることは無かった。おそらく、ダーツの投動作がこのような正確性に関与しているのであろう。ダーツでは他のスポーツの投動作等に比べて身体の動きが非常に少ない。実際にダーツの投動作で使われている身体の部位は肩から先だけであろう。つまり、制御する関節や筋肉が非常に少ない。一方、野球の投球では全身を使い、足から体幹、指先まで動かしボールをコントロールしなければならない。したがって、全身の関節や筋肉を制御しなければならない。そのため、経験者と未経験者でコントロールに大きな差が出やすいと考えられる。しかし、ダーツのように動かす部位の少ない動作では経験者と未経験者の間で差が出にくいと考えられる。その結果、一流のダーツ選手ではない今回の被験者でも標準偏差においては3%という値に近づくことができたのであろう。ほかにも、ダーツの競技特性も標準偏差を低くする要因として考えられる。ダーツは一人の選手が的を狙ってダーツを投げるというシンプルなもので、自分のペースで投げることができる。したがって、慎重にゆっくり投げることができる。一般に、速さと正確性にはトレードオフがある。つまり、正確性を高めるためにはできるだけゆっくりした動作を行う必要がある。その意味でダーツは速さを追及する必要もなく、ゆっくり正確に動作を行うことができる。このようにして正確性を高めることができることも標準偏差を低くする要因と考えられる。

 また、被験者全員がx方向よりもy方向のほうが誤差が大きく、標準偏差も大きかった。このような結果については、ダーツの投げ方が関係していると考えられる。ダーツを投げる際に主に肘の屈曲伸展動作によって縦に前腕を動かす。したがって、ダーツをリリースする際にx方向には誤差が生じにくいが、縦の前腕の動きによってy方向には誤差が生じやすいのである。そのため、全被験者ではy方向の方が標準偏差が大きくなっていたと考えられる。



 今回の実験結果からは読み取れないが、実験時の観察ではダーツの軌道が山の低い放物線であり直線に近くなると正確に的に当てやすいと感じられた。ダーツの軌道を投げる前にイメージするとき、直線で投げられる場合ではダーツと的を一直線で結ぶようにイメージをすれば良い。しかし、ダーツの軌道が山の高い放物線になる場合は具体的な軌道のイメージが付きにくく、その結果、実際に投げたときにも狙った的から大きく外れてしまいやすくなることが考えられる。したがって、ダーツをより直線的に投げられるような技術が、的に正確に当てるための技術として求められるのではないかと思った。

 ダーツをより直線的に投げるための技術に、投げる際に投速度を向上させることが挙げられる。ただ、スピードと正確性のトレードオフより、あまり速度を高めると正確性が低下してしまうことが示唆される。ただし、筋力の強い人が投げる場合、ダーツの最大速度は高くなり、軽く丁寧に投げても速い速度でダーツを投げることができる。よって、ダーツの速度が速くても、その人の出せる最大速度に対してそれほど高くならなければ、その人にとっては丁寧に投げることが出来るので、正確性は低下しないのではないかと思われる。したがって、的に正確にダーツを当てるためには筋力等を高め、ダーツを投げる最大速度を高め、丁寧に軽く投げても、ダーツが速く直線に近い軌道になるようにすることが必要かもしれない。今回の実験では、もっとも標準偏差の小さかった野球投手経験者のMがこのようなダーツの軌道を示していたように見えたので、上で述べたことがダーツの正確性に関与していることを調べる必要があるかもしれない。